名鉄瀬戸線の喜多山駅周辺では、現在高架化工事が進められています。
名鉄瀬戸線は喜多山駅周辺で名古屋環状2号線という大幹線と交差しています。名古屋環状2号線は、名二環と呼ばれる専用部と、国道302号線と呼ばれる一般部の2層構造となっています。
そんな名古屋環状2号線ですが、一般部の国道302号線が名鉄瀬戸線と平面交差しています。国道302号線は交通量が多いため、踏切を先頭に長い渋滞となっており、早急の問題解消が求められています。
本記事では喜多山駅高架化工事の取材に当たり、高架化工事事業の概要をまとめます。
事業概要
事業内容
本事業では喜多山駅を中心に、前後1.9kmを高架化します。
国道302号線を始め、名古屋瀬戸線(県道61号)や小幡西山線といった道路とも立体交差化します。本事業で除却される踏切は合計9か所に上ります。
また工事前の喜多山駅は2面3線であり、優等列車と普通停車との緩急接続はできませんが、高架化後は2面4線となり緩急接続ができるようになる予定です。またホーム有効長も6両分に延長される予定です。
完成は2023年(令和5年)を予定しています。
なお本事業に当たって、喜多山駅に併設されていた喜多山検車区は取り壊され、尾張旭検車区に機能が移転されました。本事業は喜多山検車区の跡地を活用して仮線・仮駅が整備されています。
事業目的
本事業の目的は、「国道302号線を始めとする複数の道路との立体交差化」です。国道302号線は名古屋市周辺を周回する重要な基幹道路であり、交通量が非常に多いです。
また国道302号線だけでなく、県道61号名古屋瀬戸線や小幡西山線といった重要な道路とも近くで交差しています。
個々の道路を個別で立体化するよりも、鉄道側を高架化してまとめて立体化した方が費用対効果が高いため、鉄道側を立体交差化することになったと考えられます。
事業手順
事業の施工手順は、仮線方式が採用されています。
まず仮線を整備する用地を、買収等によって確保します。用地は周辺住民の日照権に配慮するため、高架化後に高架橋の影が出来る北側を確保します。
仮線に退避させたことで空いたスペースに高架橋を構築します。今回の喜多山駅高架化事業では上り線1本分しかスペースがないため、まず上り線のみ高架橋を構築します。
高架橋を半分構築したら、その時点で2線のうち1線を高架橋に移設します。移設が完了すると、さらに仮線跡地に残り1線分の高架橋を構築します。
最後に残り1線を高架橋に移設します。移設後に空いた用地は、側道として車道及び歩道が整備されます。
喜多山駅の概要
表4.喜多山駅の諸元表
読み方 | きたやま(KITAYAMA) |
所在地 | 愛知県名古屋市守山区 |
駅番号 | ST11 |
運営事業者 | 名古屋鉄道 |
所属路線 | 瀬戸線 |
キロ程 | 9.9km(栄町駅より) |
乗車人員 | 3237人/日(2018年) |
停車種別 | 急行、準急、普通 |
駅構造 | 高架化前:2面3線 高架化後:2面4線 |
ホーム有効長 | 高架化前:4両編成 高架化後:6両編成 |
喜多山駅は名鉄瀬戸線の起点である栄町駅から11番目の駅であり、急行・準急を含めた全ての列車が停車します。
名鉄瀬戸線は原則として1時間に優等列車4本、普通列車4本の頻度で運行されています。かつ途中で追い越しできる駅が一切ないため、優等停車駅である喜多山駅は乗車機会が1時間に8回あります。
2021年5月22日のダイヤ改正では、需要の減少により日中の急行列車が削減され、優等列車が準急2本/hのみとなりました。
乗車人員は1日3237人であり、普通列車しか停車しない駅と比較すると利用者が多いです。
当駅にはかつて喜多山検車区という車両を検査する施設がありました。前述の通り、現在は喜多山駅の高架化事業に伴って取り壊され、新設された尾張旭検車区に移転しています。
なお検車区があった名残で、乗務員の交代が当駅で行われています。
国道302号線(一般部)の概要
下の画像は国土地理院Webサイト「地理院地図Vector(試験公開)」で公開されている「標準地図」に加筆したものです。なお下の画像以外にも地理院地図Vectorより引用+加筆したものがありますが、以降の画像ではこの説明を省きます。表5.国道302号線の昼間12時間の交通量(2015年)
概要
国道302号線は、名古屋環状2号線の一般部に相当し、名古屋市を中心に放射状に延びる各主要道と接続します。戦後急激に拡大する中京圏都心の交通渋滞に対し、名古屋都心を避けて郊外から郊外への移動を可能とするため、整備されました。
2020年10月現在、ほぼ全区間で直上に名古屋第二環状自動車道が整備されており、各所にあるインターチェンジで双方が接続されています。
なお海上の区間である飛島IC~東海第二IC間は伊勢湾岸自動車道と重複し、同区間は有料区間扱いとなっています。
表6.国道302号線の2015年の昼間12時間自動車類交通量
調査区間 | 有料/無料 | 交通量 | 車線数 |
名古屋南インター交差点(国道23号線)(伊勢湾岸自動車道)(名古屋高速3号大高線)(名古屋市緑区)~名古屋市緑区・大府市境 | 無料 | 17765 | 4 |
名古屋市緑区・大府市境~知多半島道路~大府IC(大府市) | 17516 | ||
大府IC(大府市)~名鉄常滑線~東海インター交差点(国道247号線)(名古屋高速4号東海線)(東海市) | 15961 | ||
東海インター交差点(国道247号線)(名古屋高速4号東海線)(東海市)~東海第二IC(東海市) | 14896 | ||
東海第二IC(東海市)~名港潮見IC(名古屋市港区) | 有料 | 57654 | 6 |
名港潮見IC(名古屋市港区)~あおなみ線~名港中央IC(名古屋市港区) | 60075 | ||
名港中央IC(名古屋市港区)~飛島IC(飛島村) | 61882 | ||
飛島IC(飛島村)~桜木大橋北交差点(飛島村) | 無料 | 14122 | 4 |
桜木大橋北交差点(飛島村)~梅之郷交差点(国道23号線)(飛島村) | 18257 | ||
梅之郷交差点(国道23号線)(飛島村)~梅之郷神明社付近(飛島村) | 9019 | 2 | |
梅之郷神明社付近(飛島村)~飛島大橋南交差点(飛島村) | 9671 | ||
飛島大橋南交差点(飛島村)~小川三丁目(名古屋市港区) | 10699 | ||
小川三丁目(名古屋市港区)~南陽中学校前交差点(名古屋市港区) | 14196 | ||
南陽中学校前交差点(名古屋市港区)~かの里東交差点(国道1号線)(名古屋市中川区) | 12463 | 4 | |
かの里東交差点(国道1号線)(名古屋市中川区)~近鉄名古屋線~JR関西本線~島井町交差点(東名阪自動車道)(名古屋高速5号万場線)(名古屋市中川区) | 18401 | ||
島井町交差点(東名阪自動車道)(名古屋高速5号万場線)(名古屋市中川区)~稲屋交差点(大治町) | 24439 | ||
稲屋交差点(大治町)~大治北インター交差点(大治町) | 17017 | ||
大治北インター交差点(大治町)~甚目寺南IC(あま市) | 7496 | ||
甚目寺南IC(あま市)~名鉄津島線~名鉄名古屋本線~廻間交差点(清須市) | 2 | ||
廻間交差点(清須市)~東海道新幹線~JR東海道本線~清洲中学校前交差点(清須市) | 19662 | ||
清洲中学校前交差点(清須市)~朝日交差点(国道22号線)(名古屋高速6号清須線)(名古屋高速16号一宮線)(清須市) | 4 | ||
朝日交差点(国道22号線)名古屋高速6号清須線)(名古屋高速16号一宮線)(清須市)~清州東IC(清須市) | 21422 | ||
清州東IC(清須市)~中沼町交差点(名古屋市西区) | 15340 | ||
中沼町交差点(名古屋市西区)~新平田橋西詰(名古屋市西区) | 20245 | ||
新平田橋西詰(名古屋市西区)~名鉄犬山線~(名古屋高速1号楠線)(名古屋高速1号小牧線)~名古屋市北区・春日井市境 | 24316 | ||
名古屋市北区・春日井市境~勝川町4丁目交差点(国道19号線)(春日井市) | 21742 | ||
勝川町4丁目交差点(国道19号線)(春日井市)~勝川町4丁目東交差点(春日井市) | 15277 | 2 | |
勝川町4丁目東交差点(春日井市)~松河戸IC(春日井市) | 8597 | ||
松河戸IC(春日井市)~春日井市・名古屋市守山区境 | 12678 | ||
春日井市・名古屋市守山区境~ゆとりーとライン~名鉄瀬戸線~大森IC(名古屋市守山区) | 18929 | ||
大森IC(名古屋市守山区)~国道363号線~地下鉄東山線~名古屋第二環状自動車道(名古屋支線)~上社南IC(名古屋市名東区) | 15637 | 4 | |
上社南IC(名古屋市名東区)~野間町交差点(名古屋市名東区) | 26401 | ||
野間町交差点(名古屋市名東区)~名古屋中環状線交差部(名古屋市名東区) | 27091 | ||
名古屋中環状線交差部(名古屋市名東区)~牧の里西交差点(名古屋市名東区) | 24864 | ||
牧の里西交差点(名古屋市名東区)~植田IC(国道153号線)(名古屋市天白区) | 28089 | ||
植田IC(国道153号線)(名古屋市天白区)~地下鉄鶴舞線~原一丁目交差点(名古屋市天白区) | 26456 | ||
原一丁目交差点(名古屋市天白区)~鳴海IC(名古屋市緑区)~地下鉄桜通線 | 22624 | ||
地下鉄桜通線~鳴海IC(名古屋市緑区)~滝ノ水橋東交差点(名古屋市緑区) | 17575 | ||
滝ノ水橋東交差点(名古屋市緑区)~名鉄名古屋本線~有松IC(国道1号線)(名古屋市緑区) | 16695 | ||
有松IC(国道1号線)(名古屋市緑区)~東海道新幹線~JR東海道本線~名古屋南インター交差点(国道23号線)(伊勢湾岸自動車道)(名古屋高速3号大高線)(名古屋市緑区) | 19547 |
上記の通り交通量はおおむね1万台以上と非常に多いことが分かります。また一般部は4車線整備する設計となっていますが、一部が暫定的に2車線となっています。
名鉄津島線や名鉄名古屋本線との交差部は通行量が7496台となっていますが、名鉄瀬戸線との交差部は18929台と非常に多くなっています。
この台数は、一部が名鉄瀬戸線との交差部から高速道へ回避する流れがある上でなおこの台数なので、早急に鉄道線を高架化し4車線化する必要があると思います。
鉄道との交差部について
国道302号線は、環状道路のため名古屋市中心部から放射状に延びる多数の鉄道線を交差します。その内、2020年8月時点で国道302号線と平面交差したままになっている鉄道線は、名鉄瀬戸線、名鉄名古屋本線(岐阜側)、名鉄津島線のみとなっています。
名鉄津島線は甚目寺駅周辺高架化事業ということで構想が挙がっています。2020年8月現在では具体的な事業内容はまだわかっていません。
名鉄名古屋本線は新清洲駅周辺高架化事業で除却されます。こちらは高架化事業の前段階として駅北側の区画整理事業及び仮線用地の取得が進められています。

そして最後の名鉄瀬戸線が、喜多山駅高架化事業で現在立体交差化工事が進められています。
名古屋瀬戸線(愛知県道61号)の概要
表7.名古屋瀬戸線昼間12時間の交通量(2015)
概要
名古屋瀬戸線(愛知県道61号)は、愛知県名古屋市東区から守山区、尾張旭市を経由して瀬戸市に至る道路です。瀬戸街道という愛称がつけられています。
名古屋市中心部から郊外に延びる放射道路の1つであり、本記事の主役である名鉄瀬戸線とほぼ並行しています。
表8.愛知県道61号線の2015年の昼間12時間自動車類交通量
調査区間 | 交通量(台) | 車線数 |
矢田5丁目交差点(名古屋市東区)~名鉄瀬戸線(矢田駅付近)~ゆとりーとライン~名鉄瀬戸線(喜多山駅付近)~(国道302号線)(名古屋第二環状自動車道)~大森交差点(名古屋市守山区) | 9872 | 2 |
大森交差点(名古屋市守山区)~名古屋市守山区・尾張旭市境 | 14136 | |
名古屋市守山区・尾張旭市境~東名高速道路~三郷交差点(尾張旭市) | 11071 | |
三郷交差点(尾張旭市)~ 愛知環状鉄道線~新共栄橋南交差点(国道363号線)(瀬戸市) | 10224 | |
新共栄橋南交差点(国道363号線)(瀬戸市)~瀬戸橋南交差点(国道155号線)(瀬戸市) | 不明 |
平面交差している箇所の交通量は9872台と計測した中では最も少ない値となっています。
名古屋市中心部よりも郊外の方が台数が多いのは、名古屋環状2号線により中心部を避けて移動する流れが強いからと考えられます。
実際に行って来た!
実際に現地を取材したときの様子は、以下のリンクからご覧ください。

高架化によって鉄道ダイヤはどのように変わる?
本事業の完了後のダイヤを以下の記事で予想してみました。興味があればぜひご覧ください。

まとめ
名鉄瀬戸線の喜多山駅の高架化工事は現在進行形で建設が進められている事業であり、視覚的にも変化が分かりやすい段階です。
完成も2023年と間近なので、完成するときを楽しみに待ちましょう。
参考文献
wikipedia(喜多山駅)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%96%9C%E5%A4%9A%E5%B1%B1%E9%A7%85_(%E6%84%9B%E7%9F%A5%E7%9C%8C)
wikipedia(国道302号線)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E9%81%93302%E5%8F%B7
wikipedia(名古屋環状2号線)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%8D%E5%8F%A4%E5%B1%8B%E7%92%B0%E7%8A%B62%E5%8F%B7%E7%B7%9A
wikipedia(愛知県道61号名古屋瀬戸線)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%84%9B%E7%9F%A5%E7%9C%8C%E9%81%9361%E5%8F%B7%E5%90%8D%E5%8F%A4%E5%B1%8B%E7%80%AC%E6%88%B8%E7%B7%9A
名古屋市
http://www.city.nagoya.jp/ryokuseidoboku/page/0000010565.html
平成27年度 全国道路・街路交通情勢調査
https://www.mlit.go.jp/road/census/h27/data/pdf/kasyo21.pdf
国土交通省国土地理院
https://www.gsi.go.jp/top.html
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