2019年12月15日に逆井~六実間の複線化を完了し、2020年3月14日に船橋~柏~運河間の急行運転を開始した東武野田線(通称:東武アーバンパークライン)。
柏~船橋間で最大11分、大宮~船橋間で最大16分短縮され、船橋と柏、大宮が大きく近くなりました。また急行列車に限り、柏駅での乗換えも無くなりました。
このような変化から、利用者や鉄道ファンの間から「残りの運河~春日部間も急行運転して全線で急行運転されれば、さらに便利になる」という意見が聞かれます。
今回は、東武野田線の線路設備・ダイヤが将来どのようになっていくか予想していきたいと思います。
東武野田線ってどんな路線?
表1.東武野田線の路線ステータス
管轄 | 東武鉄道 |
路線長 | 62.7km |
複線区間 | 大宮~春日部、運河~柏~船橋 |
単線区間 | 春日部~運河 |
起点 | 大宮 |
終点 | 船橋 |
途中主要駅 | 岩槻、春日部、七光台、野田市、 運河、流山おおたかの森、柏、 高柳、新鎌ヶ谷、船橋 |
運行種別 | 急行、区間急行、普通 |
並行在来線 | JR武蔵野線 |
東武野田線は、大宮から船橋まで東京都心の外郭に沿って敷設されている路線です。東京都心からの郊外路線と沢山接続しています。
具体的には大宮でJR線とニューシャトル、春日部で東武伊勢崎線、流山おおたかの森でつくばエクスプレス、柏でJR常磐線、新鎌ヶ谷で北総線と新京成線、船橋でJR総武本線と接続しています。
これら多くの路線と結んでいるために、通常の通勤路線とは違い、朝ラッシュでも双方向に通勤の流れが存在します。自宅から東武野田線を利用し、各通勤路線に乗り換え、仕事場のある都心へ向かうといった感じですね。
このような双方向に強い移動需要が発生する路線は、鉄道としての収益性が高くなり、運用効率が良くなります。
実際東武鉄道は、この東武野田線を東武スカイツリーライン、東武東上線に続く3番目の主力路線としており、その証拠に、少しづつではありますが複線化が進んでいます。
そして2019年度に逆井~六実間が複線化されたことにより、ついに柏~船橋間の全線が複線化されました。これにより柏~船橋間でより自由にダイヤを設定できるようになった他、急行運転が出来るようになったことで、大幅に利便性が向上しました。
東武野田線の競合路線について
ところで東武野田線には並行して存在する路線があります。同じ都心の外郭を走るJR武蔵野線です。
したがってJR武蔵野線と東武野田線は競合路線ですが、以下の通り路線の性格が少し違います。
これらのことから、武蔵野線では各駅停車の普通電車がほとんどです。必然的に武蔵野線利用での移動は所要時間は長くなりがちです。
むしろJR通勤5方面路線を走る快速電車を利用した方が、速く移動できます。それを表に纏めてみました。
表2、船橋~大宮間のそれぞれの移動手段の比較(2020年3月時点)
野田線(急行) | 武蔵野線 | 総武快速線+上野東京ライン | |
運賃 | 820円 | 940円 | 940円 |
乗換回数 | 0回 | 2回 | 1回 |
乗換駅 | なし | 西船橋、南浦和 | 東京 |
所要時間 | 78分 | 70分 | 66分 |
運行頻度 | 2本/h | 6本/h | 5 or 6本/h |
上記の通り、東京駅経由で上野東京ラインを利用するのが一番速いです。ただし乗り換え距離の長い東京駅での乗り換えが必要です。
武蔵野線経由は所要時間もかかり、乗り換えも2回と多いですが、運行頻度が6回と多いのが魅力です。
そして東武野田線は、運行頻度が少なく所要時間がかかりますが、乗換えがなく運賃が最も安いです。
これらのことから、東武野田線の課題は運行頻度と所要時間と言えるでしょう。これらは単線区間の複線化によって改善できます。
現在のダイヤ体系は?
日中の運転本数は以下のようになっています。
東武野田線は30分サイクルベースのダイヤです。後述しますが、全ての駅で1時間に6本、10分に1回の乗車機会が最低でもあります。
この運行頻度になっている理由は、東武野田線に接続する各路線の普通列車の運行本数がどれも1時間に6本だからだと思います。乗り換え時間が揃えられることで所要時間が読みやすいです。
先述の通り運河~春日部間は単線となっており、単線区間では種別を問わず全ての列車が各駅に停車します。
単線区間内の行き違いは、藤の牛島、南桜井の東方、七光台、愛宕、梅郷の西方で行います。単純なネットダイヤとはいえ、日中でも12本の列車が単線区間内を行き交っており、かなり過密なダイヤです。
逆に複線区間では優等列車による急行運転が実施されています。この急行運転は2016年に開始されており、歴史的にはまだまだ浅いです。
歴史が浅いために、特に単線区間で普通電車しか運行されていなかった頃の、いわゆるネットダイヤの構成を現在も残しています。例えば、先述の単線区間内の行き違い場所は、急行運転開始前後で全くダイヤに変化がありません。
このことから急行運転は慎重に手探りで行われていると考えられます。
急行
2016年に新設されました。日中は大宮方面が80分、船橋方面が78分で走破します。
急行は東武野田線が繫いでいる都市間の輸送を担います。したがって速達性や運行頻度が重要になってきます。
ここでネックとなるのが、春日部~運河間の単線区間です。単線である事によって、駅での行き違いに時間がかかったり、運行頻度が抑えられてしまい、急行の利便性を低下させます。
停車駅
大宮、岩槻、春日部~運河、流山おおたかの森、柏、高柳、新鎌ヶ谷、船橋
停車駅は他路線との乗換駅である大宮、春日部、流山おおたかの森、柏、新鎌ヶ谷、船橋はもちろん停車しますが、その他は線路設備を理由に停車していると思います。
春日部~運河間は単線でダイヤが組み辛いので全駅停車、岩槻と高柳は緩急接続できるので停車していると考えられます。利用者数や歴史的経緯によって停車駅を決めているという事はないでしょう。
複線区間で緩急接続や乗換駅を理由に急行が停車している駅は、利用者が少ない駅もありますが、今後は利便性の高い駅として利用者が増えていくと思います。
ちなみに日中は柏駅で運用を分断されることなく、継続して運転されます。
運行頻度
急行は全線で30分に1本運転されています。これは区間急行においても同様です。
東武特急と運行頻度が同じであり、春日部で余裕のある乗り換えできるよう配慮されています。
ラッシュ時大宮~柏間では、急行運転が取り止められます。急行運転の歴史が浅い分、背伸びしすぎないようにしていることが分かります。
緩急接続
緩急接続は、現在春日部と運河で片接続、高柳で両接続しており、いずれの駅でも普通列車と接続しています。
春日部と運河で片接続するのは、野田線各駅へ移動するのにどこからでも有効本数が毎時6本とするためです。急行運転区間で運行される普通列車の区間便に接続します。
区間急行
停車駅:大宮、岩槻、春日部~柏
2020年運河~船橋間の急行運転開始とともに区間急行の運転も始まりました。
この区間急行は運河~柏間で引き続き各駅に停車することで、運河~柏間の運行本数を抑えつつ各駅の停車本数を確保しています。
2020年のダイヤ改正の際、柏~船橋間は急行運転をほぼ全時間で運転させたのに対し、運河~柏間は16時台以降区間急行を設定して急行運転をほぼ行いませんでした。
急行運転の開始は鉄道のダイヤ改正の中ではかなり意欲的な改正です。そのため利用者が増える夕方以降では慎重な姿勢をとり、「ダイヤを変えない」という判断に至ったと思われます。
ちなみに土休日は柏方面の場合、岩槻で普通と緩急接続します。
普通
停車駅:各駅
急行が運転を開始した現在でも、野田線の基幹列車となっている種別です。東武野田線の地域輸送を担います。
日中は1時間に6本、概ね10分間隔で運転されます。
大宮~柏間、柏~船橋間の運転の他、大宮~春日部間や運河~柏間といった区間便も存在します。これら区間便は、急行・特急の急行運転区間がまだ部分的なため、急行運転区間での各駅の停車本数を補完するために運転されます。
なお普通列車は運用が柏駅で分断されています。普通列車を利用しつつ柏駅を越えた移動には乗り換えが必須です。
これは柏駅がスイッチバック構造の駅であり、かつ1番線は大宮方面、4番線は船橋方面にしか発着できない線路構造のため、2,3番線のみで普通列車と急行列車の両方を捌くことできないためと考えられます。
(もちろん、昔からの歴史的な経緯もある)
特急アーバンパークライナー
東武野田線で初めての有料座席列車で、2020年3月時点では列車本数は3本しかなく、かなりマイナーな列車です。(一番マイナーな種別のため一番最後の紹介とさせて頂きました)
しかし、使用車両は最新特急車両の500系です。停車駅も運行時間・運行区間に合わせて設定されています。
追加料金が必要ですが、快適で楽に移動ができます。利用者に好評なため、2020年6月6日のダイヤ改正で列車本数が7本に増発される予定です。
将来どんなダイヤになる?
当方では野田線の日中ダイヤは将来以下のようになると予想します。
急行の毎時3本化
野田線の急行の欠点の1つとして運行頻度の少なさがあります。
たとえ野田線の複線化によって急行が速くなっても、そもそも本数が少ないと不便なので利用してもらえません。現状概ね毎時6本の運転がされているJR線と競合するには、この運行頻度の差を埋める必要があります。
とはいえいきなり毎時6本まで本数を増やすのは難しいので、まず毎時3本・20分毎の運転を目指すべきだと思います。
30分に1本から20分に1本にすれば、駅での待ち時間が最大33%削減されます。
春日部~運河間で急行運転した場合の停車駅
将来、春日部~運河間が複線化した場合、急行は春日部~運河間でも急行運転すると思います。
このときの停車駅についてですが、運河~船橋間で急行運転を開始した時と同様、利用者数よりも線路設備を考慮して停車駅を決めると思います。
具体的には、春日部、七光台、野田市、運河が急行停車駅になると思います。
春日部
春日部が急行停車駅になるのは、誰の目にも明らかでしょう。春日部は東武スカイツリーラインと乗り換え可能であり、利用者が非常に多いです。
また春日部では、高架化事業が行われる予定であり、それに合わせて野田線側では2面4線化され、普通列車と急行列車の緩急接続できるようになります。
高架化事業の完成は2031年予定です。
七光台
七光台は利用者が1万人以下ですが、駅構内は2面4線に拡張可能になっており、普通列車と急行列車の緩急接続できるようにすることが可能です。
また南栗橋車両管区七光台支所として車両基地・留置線を構内に有しており、始発列車がいくらか設定されています。
さらに七光台乗務員管区として乗務員の交代もしているため、運用上非常に重要な拠点です。
これらのことから利用者が少ないながらも急行停車駅にする理由が存在する駅です。
野田市
野田市は現在行われている高架化により2面4線化し、普通列車と急行列車の緩急接続が出来るようになりますので、急行停車駅になると思います。
また醤油で有名なキッコーマンの本社があり、それにちなんで「キッコーマンもの知りしょうゆ館前」という副駅名を付けていることから、東武としても力を入れていることが分かります。
運河
2018年時点で運河は利用者が江戸川台より少ないです。しかし、構内が2面3線で双方向で折り返しが可能なことから、急行停車駅になっています。
春日部~運河間の複線化後も小規模ながら緩急接続できるため、乗り継ぎの利便性のために今後も急行停車駅となるでしょう。
日中の普通列車の本数
日中の普通列車の本数は、毎時6本で変わらないと思います。
先述の通り東京都心の外郭に沿って敷設されている路線であり、東京都心から放射状に延びて都心郊外を結ぶ路線と沢山接続しています。
したがって、地域輸送を担う普通列車は、接続路線との乗り換えの利便性を重視すべきであり、接続路線とダイヤサイクルパターンを合わせるべきです。
東武野田線に接続する路線は、ほぼ10分サイクルまたは20分サイクルのため普通列車の本数は、毎時6本が適切だと思います。
まとめ
色々な予想をしましたが、何より春日部~運河間の複線化・追い越し設備の増強が重要です。
今回の運河~船橋間の急行運転開始で効果が認めれ、残りの単線区間への投資が進むことを願っています。
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ダイヤ考察
工事取材
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コメント
将来の停車駅についてですが、清水公園駅または、愛宕駅どちらかは停車駅になると思います。
清水公園駅は、近くに清水公園があり、行くときに便利です。また、2面4線にもできるスペースはあるので・・・愛宕駅は、バスが沢山近くに通っていて、交通に便利です。たしかに、線路設備で言うと、春日部、七光台、野田市、運河になりますが、以上の理由から、どちらかは停まるのではないでしょうか?
僕は、停車駅について、春日部、七光台、清水公園、野田市、運河だと思います。
清水公園駅は、清水公園の最寄り駅であり、アーバンパークタウンもあります。また、清水公園駅は、いざとなったら2面4線にもなるので。。。これについて、どうでしょうか?
確かに利用者が多いので、愛宕も清水公園も停車駅にしても良いかもしれませんが、鉄道ダイヤに沿った合理的なダイヤ構築をすることが原則ですので、複線化が完了した後にバス路線網の再構築をしてもらうというのが、鉄道会社にとっては有難いでしょう。すなわち、乗降人員の数に関係なく、まず線路設備に沿った停車駅を設定して、それでも必要であれば棒線駅に急行を停車させるという判断になると思います。