2023年9月23日をもって西九州新幹線が開業1周年を迎えました。残り新鳥栖~武雄温泉間の建設について、現在関係各所が揉めていますが、個人的な意見を本記事に書きます。
所感
武雄温泉~長崎間の利用状況は2018年比で102%となっています。
長距離需要が軒並み90%前後であることを踏まえると、新幹線開業による利用増が見受けることは間違いありません。
このような結果を見ると未開通区間となっている新鳥栖~武雄温泉間もフル規格で建設されることを期待される所ですが、現在佐賀県と国・長崎県・JR九州と合意ができておらず、着工ができない状態が続いています。
世論を見ますと大多数が「佐賀は正しい、国と長崎県とJR九州が100%悪い」という意見になっています。
個人的にも杓子定規で費用負担を求める国・長崎・JR九州がおおよそ悪いと思いますが、一方で佐賀県が完全に正しいかと言うとそれは違うと思います。
新幹線が開業しても在来線特急を残せ?
佐賀県の主張がおかしいと思う点の1つ目は「新幹線が開業しても在来線特急を残せ」という主張です。
これは博多と佐賀は距離が近いため、新幹線による時短効果が薄く、料金が高くなるだけなので、デメリットの方が大きいことが根拠となっています。
しかしこれは間違いです。そもそも在来線特急すら必要あるでしょうか?
佐賀駅は佐賀市の中心駅であり、佐賀市経済圏の中心かと思いますが、同時に福岡都市部への通勤圏内にある駅です。
博多駅と佐賀駅は、距離にして53.6㎞しか離れていません。快速電車が鳥栖~佐賀間で各駅に停車したとしても1時間弱で移動できます。
また佐賀と福岡の間には西鉄の高速バスが高頻度で運行されています。料金も片道900~1100円で非常に安いです。
このような沿線環境においては、(鐵坊主氏も仰っていましたが)直通の快速電車を運行するのが妥当です。他地区の状況を以下に列挙します。
というわけで博多駅と佐賀駅の2地点間のみ着目すれば、快速電車で十分と考えます。
快速電車を高頻度で運行させるためには、在来線特急の廃止、そしてそのための西九州新幹線のフル規格での建設が必要です。
現行のダイヤでは佐賀駅から鹿児島本線に直通する列車が少ないです。その理由は長崎本線や鹿児島本線に大量の特急電車が走行しているからです。
また九州新幹線が開通していなかった頃は、熊本や鹿児島へ向かう特急も走行していました。そのため長崎本線直通の特急は肥前山口駅まで佐世保方面の特急と長崎方面の特急が併結して12両で運転されていました。それくらい博多~鳥栖間は過密区間でした。
博多と佐賀を直通する快速列車を設定する余裕は当然なく、止むを得ず博多から長崎や佐世保に行く利用と佐賀に行く利用をまとめて輸送する必要があった訳です。
西九州新幹線として長距離輸送が別線に移行すれば、快速電車を走らせる余裕は必ず生まれます。
ここに西九州新幹線をフル規格で建設する意義があります。
ついでに言うと、JR九州に西鉄バスと競合する気概があるならば、鳥栖~江北間の上下分離はあっても経営分離はないでしょう。経営分離をしてしまうと現行の運賃1130円より高くなってしまいます。
佐賀空港経由にしろ?
2つ目のおかしいと思う点は、「佐賀空港経由にしようとしている点」です。
佐賀空港は佐賀市よりかなり南の海の近くにあります。この地域はかつて干拓も行われた非常に地盤の弱い地域です。新幹線を建設するには不向きと言えるでしょう。
またフリーゲージトレインでの運行を反故にされたから新幹線の建設を拒むのであれば、佐賀空港経由にしろという主張は下心アリアリで疚しいと思います。
新幹線が不要ならば不要で、どのルートにも反対すべきでしょう。
なぜフリーゲージトレインなどという実用化していない技術を根拠に武雄温泉~長崎間の建設を認めた?
そして、3つ目として「なぜフリーゲージトレインなどという実用化していない技術を根拠に武雄温泉~長崎間の建設を認めてしまったのか」ということです。
そこに国や長崎県に騙されたからなどと宣う人がいますが、そのことに佐賀県側の責任が全くないということはないでしょう。
もう武雄温泉~長崎間をフル規格で建設してしまったのだから、残りの区間もフル規格で建設すべきです。それが最も費用対効果が高いです。
まとめ
ということで色々と佐賀県側の非を主張してきましたが、とはいえここまで西九州新幹線の建設がこじれた原因は「国長崎JR九州:佐賀県=9:1」の割合で国・長崎・JR九州側にあるかなと思います。
結局どいつもこいつも「身を削る覚悟がない」。
特にJR九州は快速電車を走らせる提案をしてほしいです。この期に及んで在来線特急を残そうと佐賀県を現在進行形でだまし続ける姿勢は良いとは思えません。
でなければ、佐賀駅に新幹線駅を建設・在来線特急廃止なんてできないでしょう。
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