観光特急を導入した東武と引退させた小田急。どうして方針が違うの?

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小田急

2023年、東武鉄道から新型特急スペーシアXがデビューしました。既存のスペーシア100系でも個室などの観光客向けの仕様を備えていましたが、スペーシアXではより観光客向けに特化した仕様となり、メディアでも大きく取り上げられました。

同じ年、同じく特急専用列車を抱える小田急電鉄では、観光に特化したVSE50000形が12月の最終走行をもって完全に引退することになりました。同じ関東大手私鉄であるにも関わらず、こうも方針が違うのはなぜでしょうか。

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観光客数の違い

一つ考えられるのは「両鉄道会社が抱える観光地の入込客数の違い」です。

東武鉄道が抱える観光地といえば日光がありますが、令和4年の日光市の入込客数は872万人となっています。それに対して小田急電鉄が抱える観光地の箱根は1736万人と日光の倍の入込客数が存在します。

これだけ利用者が多ければ、特急ロマンスカーにまず求められるのは輸送力でしょう。小田急電鉄では常時毎時3本特急列車が供給されているわけではありませんが、20m車10両編成で毎時3本以上走らせているにも関わらず、休日の午前中は満席になることが多いです。

対する東武は20m車6両で、運行本数は毎時2本・30分に1本程度となっています。太田方面特急があるにしても、最大で毎時3本日光方面へ運行可能なことを考えると、両数だけでなく運行本数も少ない、余裕がある運行体制であることが分かります。

このように、浅草発ですら輸送力に余裕がある東武特急では、輸送力よりも豪華さに特化した列車の運行が可能です。既存の輸送力への対応ではなく、輸送需要そのものの掘り起こしが目的となっているのがスペーシアXです。

線路設備の違い

東武鉄道と小田急電鉄とでは、それぞれが抱え持つ線路設備の制約が異なります。

東武鉄道の設備制約

東武鉄道の設備制約といえば、まず挙げられるのは編成両数の制約です。

浅草駅や下今市駅、東武日光駅ではホームの長さが6両分しかなく、どの駅もホーム延伸が難しい状況です。そのため使用車両は皆6両が限界であり、7両編成のTHライナーは乗り入れができません

しかし、ホームの延伸が喫緊に必要かと言われるとそれは違います。なぜなら「都心側でターミナルの分散できる」からです。

東武鉄道の都心側のターミナルは浅草駅だけではありません。栗橋駅からJR線に乗り入れ、新宿駅まで運転される列車があります

またJRの羽田空港新線建設に合わせて、久喜駅での館林方面への相互直通運転も構想されています。日光方面、館林方面双方で毎時6本ずつの特急列車の運転が出来る環境を整えられる可能性があります。

したがって、(JR直通列車向けに栗橋以北の駅のホームを伸ばす必要があるかもしれませんが)基本的に需要が伸びたとしても無理に編成を伸ばす必要がないのが東武です。加えて、やはり下今市駅までずっと複線が敷設されているのが大きいですね。

何度も言いますが、東武は設備に見合うだけの利用者を獲得するのが今後の課題です。ビジネス向けの輸送力を要求される場面ではリバティを使用し、観光客向けの豪華な座席を提供する時はスペーシアXを使用するという、用途に合わせた特化型の特急列車が今後製造されていくでしょう。

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小田急電鉄の設備制約

逆に小田急電鉄は、小田急線内は10両編成での運行が可能な一方で、箱根登山線内は7両編成が限界です。箱根登山線内は勾配が激しいので、10両対応の設備を整えるのも複線化するのも難しいでしょう。

そして、箱根登山線において最もネックなのが、「全線単線」でかつ「箱根湯本駅の特急列車の発着線が1本しかない」ことです。折り返し時に清掃や座席転換も行う必要があることを考えると、1時間に3本運転するのが限界でしょう。

東武鉄道の日光方面の需要よりも単純計算で倍の利用者がいるにもかかわらず、輸送力は東武鉄道の半分しか用意できない。となれば、1編成当たりの座席を確保しつつ少しでも豪華な座席を目指すのが最適解ですね。

小田急電鉄ではバブル崩壊後、落ち続けるロマンスカーの利用者を取り戻すために観光特化のVSE50000形が製造されました。座席定員は358名で、20m車7両分の長さがありながら6両編成のEXEと同じ座席定員となっており、内装の豪華さを重視していることが分かります。

そして、このVSEは運行当初は朝夕ラッシュの通勤特急としての使用はせず、箱根への輸送のみに使用される徹底した運用を組んでいました。後に朝夕にも使われるようになりますが、基本的にはラッシュから大きく外れた時間帯での走行でした。

VSEは2022年のダイヤ改正をもって、定期運用から撤退しました。その理由は「VSEの最も特徴的な、アイデンティティともいえる連接構造が長期運用に耐えられない」ということでした。

2018年から出たGSEはロマンスカーならではの前面展望席を持ちながら20m車7両ボギー台車構造となりました。GSEはVSEで復権させたロマンスカーのブランドの中で必要な物とそうでないものを取捨選択して誕生させた列車です。

加えて通勤特急としても使用できるように座席定員を400名に増やしています。GSEはデビュー当初から通勤特急として使用されています。

しかし、このGSEも後に欠点を抱える列車となってしまいました。その欠点とは「7両固定編成による輸送力の低さ」です。

これを象徴するのが、2020年のダイヤ改正で看板特急として運用に就いていた新宿9時ちょうど発のスーパーはこねの使用車両がGSEからEXEに変更されたことです。この変更によって新宿から小田原までの輸送力が増強されることになりました。

ただし、箱根湯本までの輸送力はEXEよりもGSEの方が多いです。またEXE車にはロマンスカー特有の前面展望座席がありません。

個人的な意見になりますが、既存のロマンスカーは全て箱根湯本発着を取りやめて7+3両の前面展望付き車両を製造すべきだと思います。さらに新宿側の3両は御殿場方面への直通にも対応させ、伊勢原や秦野での分割・併合も出来るようにすべきだと思います。

GSEは江ノ島方面に特急列車に使用、MSEは北千住~秦野間の地下鉄直通に専従させるのが理想的だと思います。とはいえ編成数が足りませんので、地下鉄直通対応のデュアルシート車両を新造して編成数不足をフォローしても良いと思います。

ちなみに小田急側のダイヤ案は以前こちらの記事に掲載しましたので、良ければご覧ください。

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まとめ

ということで東武の話から始まったのに、最後は小田急の話になってしまいました。まあ古い電車をのさばらせる東武より、新しい車両が多い小田急の方が好きだからまあいっか。

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