愛知県一宮市の北端、北方町から真南へ南下し弥富市のほぼ南端である鍋田までを縦貫する西尾張中央道。
この西尾張中央道において、特に名鉄尾西線との交差地点付近は渋滞がひどいことで有名です。
そんな西尾張中央道の渋滞の名所に対して、混雑緩和に寄与する新しいインフラが開通します。
今回はそんな渋滞緩和に寄与する一宮稲沢北インターチェンジについて、現地取材した様子を紹介します。
本事業の概要
本事業は、東海北陸自動車道と一般道を接続する新しいインターチェンジを愛知県一宮市に建設する事業です。
東海北陸自動車道の現在の本線を南へ延伸させ、名神高速道路をアンダーパスしつつ、センターランプ方式で西尾張中央道に接続します。
2011年より着工し、当初は2013年に開業される予定となっていましたが、2度の延期を経て2021年3月28日に開業しました。
なおこのICは名神高速道路とは接続しておらず、名神高速道路からの出入りは不可能です。
本事業のメリット
本事業の効果について、中日本高速道路株式会社(通称:NEXCO中日本)では以下のように挙げています。
東海北陸自動車道へのアクセス強化・時間短縮
ICの開通により一宮市西南部や稲沢市から東海北陸自動車道へのアクセスが強化されます。
今まで同地域から東海北陸自動車道へは、一宮稲沢北ICより少し北に行った尾西ICからアクセスしていました。
同地域から尾西ICまでの間には、何ヵ所もの信号と名鉄尾西線の踏切を越える必要がありました。
特に名鉄尾西線との交差部では踏切で交通が妨げられる上に、西尾張中央道の車線が1車線に狭まるため、日常的に渋滞が発生しています。
今後より早く高速道路に乗ることができることで、大幅な所要時間の短縮が可能になるでしょう。
西尾張中央道や名神高速道路の渋滞緩和。
ICの整備により、一般道の西尾張中央道や東海北陸自動車道に接続する名神高速道路の渋滞緩和が期待できます。
なぜなら、東海北陸自動車道利用者が渋滞の多発地帯である西尾張中央道の名鉄尾西線との交差部や、名神高速道路の一宮IC~一宮JCT間を避ける流れが発生するからです。
西尾張中央道では、名鉄尾西線との交差部前後の交通量が減少し、渋滞が緩和するでしょう。
名神高速道路でも、交通量の減少によって渋滞発生頻度が下がると考えられます。
西尾張中央道(県道14号線)とは
上の画像は国土地理院Webサイト「地理院地図Vector(試験公開)」で公開されている「標準地図」に加筆したものです。なお上の画像以外にも地理院地図Vectorより引用+加筆したものがありますが、以降の画像ではこの説明を省きます。
西尾張中央道は愛知県一宮市の北端、北方町から真南へ南下し弥富市のほぼ南端である鍋田までを縦貫する路線です。尾張地方西部の南北の幹線といえるでしょう。
北端では岐阜稲沢線と接続し、岐阜県に至ることができ、また南側は国道1号線、東名阪自動車道、伊勢湾岸自動車道と接続しています。
表2.北尾張中央道の2015年の昼間12時間自動車類交通量
調査区間 | 交通量(台) | 路線名 | 車線数 |
中起交差点(一宮市)~名鉄尾西線(開明駅付近)~開明南交差点(一宮市) | 12930 |
岐阜 稲沢線 |
2 |
開明南交差点(一宮市)~苅安賀交差点(国道155号線)(一宮市) | 4 | ||
苅安賀交差点(国道155号線)(一宮市)~名鉄尾西線(苅安賀駅付近)~北高井交差点(一宮市) | 2 | ||
北高井交差点(一宮市)~市役所前交差点(稲沢市) | 4 |
||
市役所前交差点(稲沢市)~東海道新幹線~名鉄尾西線~(あま市)~蛭間町新田交差点(津島市) | 20889 | 一宮 蟹江線 |
|
蛭間町新田交差点(津島市)~神守町交差点(津島市) | 22201 | ||
神守町交差点(津島市)~川並交差点(蟹江町) | 20124 | ||
川並交差点(蟹江町)~東名阪自動車道(蟹江IC)~JR関西本線~近鉄名古屋本線~芝切交差点(国道1号)(蟹江町) | 27660 | ||
芝切交差点(国道1号)(蟹江町)~(弥富市) ~(飛島村)~稲荷西交差点(国道23号)(弥富市) |
21116 | 蟹江 飛島線 |
|
稲荷西交差点(国道23号)(弥富市)~操出交差点(弥富市) |
12951 | 名古屋 西港線 |
|
操出交差点(弥富市)~鍋田交差点(伊勢湾岸自動車道)(弥富市) | 12912 |
上記の通り、この西尾張中央道は特に南部で先に説明した大幹線と接続するため、交通量が非常に多くなっています。そしてその交通量に対応するように、南側の区間は片側2車線の計4車線となっています。
しかし、この西尾張中央道は名鉄尾西線と交差する地点が片側1車線の計2車線となっており、踏切前後の交差点の存在と相まって激しい渋滞を発生させています。
東海北陸自動車道とは
東海北陸自動車道は中京圏と北陸地域を結ぶ高速道路です。愛知県一宮市から北進して岐阜県を経由し、富山県砺波市まで至ります。
高速道路ナンバリングは「E41」が割り振られています。
この高速道路は中京圏と北陸地域の交通の確保や交流の活性化を目的として整備されました。
2008年に全線開通するまでかかった事業費は合わせて1兆2190億円になります。
特に飛騨清見IC~白川郷IC間にある飛騨トンネルは、2021年現在日本で3番目の長さとなる10712mあり、総事業費980億円、建設するのに約11年かかりました。
表1.東海北陸自動車道の2015年の昼間12時間自動車類交通量
調査区間 | 交通量 | 車線数 |
一宮稲沢北IC(愛知県一宮市)~一宮JCT(愛知県一宮市) | 祝開通 | |
一宮JCT(愛知県一宮市)~一宮西IC(愛知県一宮市) | 33828 | 4 |
一宮西IC(愛知県一宮市)~尾西IC(愛知県一宮市) | 24937 | |
尾西IC(愛知県一宮市)~一宮木曽川IC(愛知県一宮市) | 27450 | |
一宮木曽川IC(愛知県一宮市)~岐阜各務原IC(岐阜県各務原市) | 25428 | |
岐阜各務原IC(岐阜県各務原市)~関IC(岐阜県関市) | 19836 | |
関IC(岐阜県関市)~美濃関JCT(岐阜県関市・美濃市) | 16029 | |
美濃関JCT(岐阜県関市・美濃市)~美濃IC(岐阜県美濃市) | 15472 | |
美濃IC(岐阜県美濃市)~美並IC(岐阜県郡上市) | 12932 | |
美並IC(岐阜県郡上市)~郡上八幡(岐阜県郡上市) | 12163 | |
郡上八幡(岐阜県郡上市)~ぎふ大和(岐阜県郡上市) | 10088 | |
ぎふ大和(岐阜県郡上市)~白鳥IC(岐阜県郡上市) | 9534 | |
白鳥IC(岐阜県郡上市)~高鷲IC(岐阜県郡上市) | 9041 | |
高鷲IC(岐阜県郡上市)~ひるがの高原SASIC(岐阜県郡上市) | 8976 | |
ひるがの高原SASIC(岐阜県郡上市)~荘川IC(岐阜県高山市) | 8513 | |
荘川IC(岐阜県高山市)~飛騨清見IC(岐阜県高山市) | 7896 | |
飛騨清見IC(岐阜県高山市)~飛騨トンネル~白川郷IC(岐阜県大野郡白川村) | 4745 | 2 |
白川郷IC(岐阜県大野郡白川村)~五箇山IC(富山県南砺市) | 4099 | |
五箇山IC(富山県南砺市)~城端SA(富山県南砺市) | 4572 |
|
城端SA(富山県南砺市)~福光IC(富山県南砺市) | 4 | |
福光IC(富山県南砺市)~南砺SIC(富山県南砺市) | 5144 | 2 |
南砺SIC(富山県南砺市)~小谷部砺波SIC(富山県小谷部市・砺波市) | 5558 |
交通量は愛知県区間が最も多く、岐阜県と富山県の県境までは北進していくほど利用者は減っていき、富山県内に入ると再び自動車台数が増えていきます。
車線数についても愛知県から飛騨トンネルの手前、飛騨清見ICまで4車線となっており、そこから北は大方2車線となっています。
なお富山県内の一部区間の4車線化が公式に発表されており、工事は2022年までに順次完成予定となっています。
実際に行って来た!
開通前2021年3月15日時点
本ICの料金所建屋を南側・入り口側から撮影した様子です。開通直前なので当然ほぼ全ての整備が完了しています。
北側・出口方面からの様子です。手前の一般道はまだ1車線のままです。
ICの入り口に設置される看板です。現象では真っ白ですが、うっすらと看板に案内が印字されていることが分かります。
名神高速道路より北側にある歩道橋からICのアプローチ線を撮影した様子です。
東海北陸自動車道に繋がる長い上り坂が大変壮観です。
苅安賀南交差点から見たアプローチ線の様子です。この交差点から少しずつアプローチ線が地平に降りていきます。
供用開始後2021年3月29日時点
供用開始して翌日の2021年3月29日の様子です。柵が取り払われ料金所に入ることが出来るようになります。
料金所に進入可能の青ランプが点灯しました。2レーンありますが、どちらもETCで通ることが可能です。
出口側の様子を歩道から見てみます。料金の西側には係員の詰所のような建物が建っています。
開通したICの前面展望
出口側
最後に供用開始したランプの前面展望を確認していきます。まずは出口側から確認します。
分岐の手前から看板がいくつも設置され、道を間違えないよう注意喚起しています。
概要でも説明した通りセンターランプ方式なので、本線の右側から一般道への右側から分岐していきます。
名神高速道路をアンダーパスするので、高架化から一気に下っていきます。
道幅はおそらく2車線分あるものをラインで1車線に狭めているものと思われます。これは将来構想として一宮西港道路に転用するためだと考えられます。
歩道橋・名神高速道路をアンダーパスすると、すぐそこでICの料金所になります。
見て分かる通り、料金所は一宮JCTの名神高速道路から東海北陸自動車道へのランプの真下にあります。
一宮稲沢北ICは一般道の西尾張中央道に対してもセンターランプになっているので、合流する際は注意が必要です。
入口側
今度は入り口側を見ていきます。料金所に向かって西尾張中央道から右へ分岐していきます。
ただの料金所のはずですが、その奥にあるJCTのおかげで厳かに見えます。
名神をアンダーパスしたら、建築予定の名鉄尾西線の高架橋をオーバーパスするべく、かなりの勾配で上っていきます。
東海北陸自動車道へ右から合流します。日本の高速道路では追越車線と呼ばれる車線に合流するので、急接近してくる車にぶつからないように注意が必要です。
まとめ
という訳で以上が一宮稲沢北ICの概要・取材動画でした。
本ICの整備によって、少しでも周辺道路の渋滞緩和、地域の活性化につながってくれることを心より願っています。
動画版(youtube)
当方では、供用を開始した一宮稲沢北ICの様子を動画でもまとめています。是非ご覧ください!
参考文献(画像出典含む)
wikipedia(東海北陸自動車道)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E6%B5%B7%E5%8C%97%E9%99%B8%E8%87%AA%E5%8B%95%E8%BB%8A%E9%81%93
wikipedia(一宮稲沢北インターチェンジ)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%80%E5%AE%AE%E7%A8%B2%E6%B2%A2%E5%8C%97%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%B3%E3%82%B8
中日本高速道路株式会社
https://www.c-nexco.co.jp/corporate/pressroom/news_release/5010.html
国土交通省国土地理院
https://www.gsi.go.jp/top.html
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